interview インタビュー

二千花インタビュー アルバム『二千花』

2007年2月にシングル『エーデルワイス』でメジャーデビュー。アンビエントな雰囲気たっぷりのトラックにふわりと浮遊感のある女性ボーカル。"二千年代の花となりますように"という想いの宿るバンド名・二千花と名づけられた彼らはボーカルの宮本一粋(いっすい)とギタリストでコンポーザーの野村陽一郎の2人組だ。ポップという言葉では片付けようのない独特な雰囲気を持ったそのサウンドと一度耳にするとハートから離れることのない一粋のふわりと柔らかく優しいボーカルという唯一無二の武器を持ったこの二千花の魅力に迫るべく、2人を直撃した。二千花とはどのようにして結成されたのか。宮本一粋という女性はどんなボーカリストなのか。そして野村陽一郎が思い描く現在の二千花、未来の二千花とは。ファーストアルバム『二千花』が発売した今だから話せる、二千花の過去・現在・未来の話をここに記したい。そこから見えるのは。21世紀に咲き誇る"二千花"という荘厳かつ華やかな大輪の花。 Interview & Text by えびさわなち

―― 二千花はどのようにして結成に至ったんでしょうか? 一粋/ 共通の知り合いの紹介で知り合ったんですけど、当時わたしがギターを練習していてギターの先生として紹介されたのが最初の出会いでしたね。それで先生としてギターだけでなく、音楽の色んなことも教えてもらったり、色んな音楽も聴かせてもらっていたんですけど、その中で陽一郎くんのデモを聴かせてもらって「歌おうか」って話になったことが結成のきっかけです。そのときに聴かせてもらったのがデビュー曲の『エーデルワイス』だったんです。そのデモを楽曲に仕上げたところで「一緒にやっていこう」って話になって、二千花になりました。元々はわたしがひとりで"二千花"だったんですけど、ユニット名にそのまま名前を残した形ですね。

陽一郎/ 初対面のときは一粋が18歳とか19歳くらいで、金髪だったんですよ。会った瞬間は「お!?」と。イマドキの女のコだなぁ...と(笑)。初めはたくさんある現場の一つとしてスタジオに入ったのを憶えています。第一印象はそうだったんですけど、歌ってみようって彼女の歌を聴いて、独特な声を持ったコだなぁ...と思ったんですよね。そこから1年半くらい経って二千花になったんですけど。楽曲を作っていく中でサウンド・プロデュースも僕がやりますということでレコーディングにあたってコーネリアスやくるりでやっていらっしゃるエンジニアの高山徹さんにお願いしたら快諾して頂けて、ドラムとベースはGREAT3のおふたりにお願いして...。とにかく自分の好きなアーティストにお願い出来て、すごくアットホームな雰囲気で、みなさんとても愛情を持って進んでいく現場だったんですね。その充実感を感じているときに「メンバーとしてやらないか」って話になったんです。最初はお断りしたんですけど、このファミリー感がいいなぁって思ったことで二千花としてやっていくことにした、というのが経緯ですね。

―― 一粋さんご自身は小学生の頃にオーディションでグランプリを獲得されていますが、そこからデビューまでは非常に長い時間が経過していますよね。その間、不安や焦りはなかったんでしょうか? 一粋/ 漠然と、いつかはわからないけれど歌手になるんだっていうことはずっと思っていたんです。早かれ遅かれそうなるんだからっていう想いがあったから焦ることはなかったんじゃないかと思います。それにあんまり早い時期にデビューしたいと思っていなかったんですよね。わたし自身はデビューすることが夢なわけじゃなく、自分で「今だ」って思うときにCDとか出せていればいいなってくらいで。自分でも実力はまだまだだとも思っていたから、焦りも不安もなかったです。 ―― その「今だ」というタイミングが来たことでスタートした二千花ですが、さきほどお話されていた"アットホーム"な中でのレコーディングとは言いつつ本当はすごいメンバーとの作業ですよね。 陽一郎/ 本当にそうですよね。みなさん、初めましてだったんですけど。でもあそこで顔を合わせた瞬間に、先に進む道みたいなものが出来たのかなぁ...って気がしますね。運命的な。日本で一番忙しいんじゃないかってくらいのエンジニアさんが快諾してくれて、GREAT3の高桑さんと白根さんも快諾してくれて。

一粋/ 音が気持ちいいんです。音に関しては気持ちいいかそうでないかしかわからないんですけど、それでもこのメンバーでのレコーディングではみんなが「これいいね」って言ったテイクに同じくいいなって気持ちが芽生えて、私とはキャリアも全然違うんだけど、繋がってるなって。音楽のキラッと光るいいところが共有出来てるのかなって思えて嬉しかったですね。すごく刺激的な現場ですよね。 ―― 楽曲制作はどのように進めていくんでしょうか? 陽一郎/ デモを僕が作って、それを一粋に聴かせて、その中で「こう進めようか」っていう方向性が決まったら仮歌を録って、さらにレコーディングすることになったところでフルサイズ作って、そこからアレンジを家でやってきます。ドラムやベースの音を録ってまた家に持ち帰って...。そうやって作ってます。そこまでやっておいて歌入れが半年後な曲もあったりして。まずはオケをしっかり作ってという感じでやってきましたね。でもそれもデビューする前からアルバムまでの期間が長かったのでたまたま出来たってことなんですけどね(笑)。でも今後は余裕の時間がぐっと短くなるだけで基本の部分では変わらないでしょうね。

―― 歌詞の部分に関してはどうでしょう。 陽一郎/ "Pokets of Demo"という名前がついてますが、基本は僕と一粋、あとはディレクターも加えた3人のペンネームなんです。二千花への僕の関わりが当初は若干プロジェクト的な感覚だったのが『エーデルワイス』が出来た後にメンバーになったという流れもあったので3人のペンネームというカタチを取ったんですよね。一粋とディレクターで歌詞を描いていた中で僕も言葉の表現や様々なところで歌詞に言葉を入れていったこともあって。そういう形式で歌詞は出来上がっていっています。ただ、声がよく伝わるように、というのをメインに曲も歌詞も作っていっています。 ―― 野村さんはプロデューサーという視点もあるから二千花に対して客観的な印象を受けますね。 陽一郎/ 自分で歌っていないので、一粋の声を伝えたいという想いで楽曲を作っている時点で客観的かもしれないですね。バンドなんかだと、瞬間の、生の雰囲気をパッと真空パックにして盤に入れ込んでみんなに届ける作業じゃないですか。その感覚ももちろん大好きなんですけど、二千花の場合は一粋の声が「イェ〜イ!」というガッツのあるものではなく、繊細なものだったので、テイクを重ねていい演奏をする、というよりは音楽的に計算したりしているんですね。そうしていくうちにどんどん冷静になっていくし「この音色はこのあいだ使ったから絶対に使わないようにしよう」って縛りを作ったり「このフレーズはあの曲に似てるって言われるとシャクだからやめよう」とか選択枝を狭めていっているとますます客観視するようになっていくんだと思いますね。

―― その一粋さんが歌うときに「わたしの歌のスタイルはこうだ」と意識していることはありますか? 一粋/ その曲のイントロだったり、自分が最初に声を発したときに全てが決まるというか。前もって「こういう風に歌おう」とか考えたりはしないで歌います。もちろんテンションもあげるし、集中はするんですけど、歌いだすとまっ白になる感じがするので、あまり意識しないですね。ただ自分がリラックス出来るようには努力します。緊張やしがらみを溶かすように自分をいたわってあげて歌います。心をあけて風通しのいい感じにして歌うようにしています。最近、ライブをよくやっているので、特にそういう風に感じながら歌っている気がします。 ―― ライブで歌うのとレコーディングで歌うのは同じ? 一粋/ 間逆なんじゃないかなぁ...。レコーディングのときは言葉重視というか。わりと言葉を伝えようと歌うんですけど、ライブでは景色を伝えたいというか。一粋が描いた風景を届けたいんですよね。伝えたいという想いは同じくらいなんですけど。ライブではもちろん言葉も大事なんですけど、それよりも空間や空気や懐かしい匂いだったり。そういうものが歌で伝わって、その場でしか味わえないような何かをあげたいなと思うから。発信源が違う気がしますね。一粋が楽曲から感じるものを、お客さんと一緒に味わいたいなっていう気持ちが強いのがライブでの歌ですね。

―― なるほど。そんな言葉が詰まったアルバム『二千花』ですが、発売後の評判はいかがですか? 一粋/ 「いいね」って言ってもらえるのがすごく嬉しいです。ひと言「いいね」っていうシンプルな言葉は素直に嬉しいし、疑いがない感じがして「本当?ありがとう」って言えます。二千花らしいねって言われるのが嬉しいです。 ―― その『二千花』はすごくバラエティに富んだ楽曲が並ぶ1枚。カラフルな"二千花"が息づいていますよね。 陽一郎/ よくバンドのファーストアルバムはそのバンドのベストアルバムだって言いますけど、そのプレッシャーに負けないように作りましたね。むしろカラフルにしすぎてたなって思うくらいで。次どうしようかなって感じです(笑)。 ―― カラフルにしすぎた(笑)ファーストアルバムを経て、次なる二千花はどんな風に聴かせていこうとお考えでしょうか? 陽一郎/ 今の時代、売れるのは難しいなと改めて感じているんですが、だからと言って音楽性を曲げたくもないし、安売りもしたくはない。だけど『二千花』は自分たちのエゴを貫いていくようなバンドでもないがゆえのカラフルさが出来たし、二千花のイントロデュースがこの1枚で出来たので、この先はどこかもう少し深みのあるものをやりたいなと思いますね。

―― ライブではジャクソン・ファイブの『ABC』で一粋さんのソウルフルな歌も聴けますが、今後そういう面も出てくるのでしょうか? 陽一郎/ まさにそうですね。あの曲は彼女がオーディションに出たときの歌だったからライブでもやっているんですが、『エーデルワイス』を最初に作ったことで自然と二千花のカラーが出来た部分があったので、『ABC』のようなスタイルの楽曲があっても面白いかな、とも思っていますね。ただ僕自身はポップに寄り過ぎるものはやりたくないので、なにかしらか二千花らしいアプローチで出来ればいいなぁ...と思います。 ―― 一粋さんはこの先の二千花でやっていきたいことはありますか? 一粋/ まずは自分で歌詞を書きたいです。自分の言葉で。曲に関してはどんなジャンルでもいいのでいいメロディを歌いたいなっていう気持ちはずっと変わりません。ただここまで色んな振り幅を出してはいるのでこの『二千花』を土台にした上で自由に遊んで、色んなことにチャレンジしていきたいです。

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二千花

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2008/06/18
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