interview インタビュー

GENERAL HEAD MOUNTAINファーストアルバム「深まる日々に、微笑みを。」インタビュー

GENERAL HEAD MOUNTAINがメジャー移籍後、初になるフル・アルバム『深まる日々に、微笑みを。』を完成させた。00年に松尾昭彦(Vo/B)を中心に結成され、03年にオカダコウキ(G)、海太(Dr)の現3ピースで固定した彼らは、同業のバンドマンからも一目置かれる熱きライヴ・パフォーマンスを展開している。そのサウンドは、フォークに通じる歌心たっぷりのヴォーカルに、パンクもオルタナティヴもロックもすべて飲み込んだ扇情的な演奏が乗り、独自の境地を切り拓いている。今作は、その静と動のコントラストが際立った素晴らしい内容である。今回、中心人物である松尾にバンドの成り立ち、音楽的ルーツ、前シングル「羽」同様に今作のジャケを担当した筒井はじめ氏との出会い、そして、今作で辿り着いた表現者としての考えに至るまで、つぶさに話を聞いてきた。 interview & text by 荒金良介

―― バンドをやり始めたきっかけは? 松尾/ 宮崎の田舎で育って、そこで野球をやっていたんですけど。辞めた後にすごく時間ができたから、バンドでもやるかって。 ―― それはいつ頃ですか? 松尾/ 高校ですね。ギタリストになりたいと思っていたんですけど、ジャンケンで負けたからベースになって(笑)。最初はもう一人ヴォーカルがいて、ザ・ブルーハーツ、ハイ・スタンダード、モンゴル800、グリーン・デイとかをコピーしてました。で、ヴォーカルが抜けたから、僕が歌って。高校卒業後は福岡に行ったけど、メンバーとケンカして、あっさり解散して。それで宮崎でやり直そうと思って、高校の連れの後輩が今のドラムなんですけど、そいつを誘ったらギターも連れて来てくれて、今の3人になりました。

―― その3人でどんな音楽をやろうと? 松尾/ メンバー内で仲良くやるのがバンドじゃない?みたいな考え方があって。僕はそういう考えじゃなかったので、じゃあ、ゆっくり自分のやりたい音楽に変えていこうと思って。やってる音楽は、今とそれほど変わってないと思うんですけど。 ―― 以前はもっとゴーイング・ステディやモンゴル800に近い音だったんですよね。 松尾/ そうっすね。その世代に属していたから。でも漠然と空気で何かを表現したいと思って。それで「紅色」という曲ができたときに、お客さんの反応が全く変わったんですよ。みんなこういう曲が聴きたいんだと思って。言葉のリズムがあって、演奏も "くる"ときにキて、メロも立ってて、その上で季節感もあるという。僕はそういうものを聴きたくて。

―― そういう音楽的価値観は、どこで培われたんですか? 松尾/ フォーク・ソングが根っこにあるのは間違いないですね。父がすごく好きで、小さい頃から耳に入ってたんで。吉田拓郎、松山千春、井上陽水さんとかそういうど真ん中の人たちを聴いてましたね。 ―― 特にフォーク・ソングのどの辺に惹かれて? 松尾/ 歌っていつか褪せていくものだと思ってて。フォークソングはそのスピードがすごくゆっくりで、深みを増しながら褪せていく感じで。素敵だな、美しいなと思って。時代の流れと共に確実に歌は色褪せているんだけど・・・その褪せ方が魅力的だなって。 ―― 今作の表題に通じるようなコメントですが。 松尾/ はい、季節感、情景、心情がたっぷりなので、それがいいなと。前に「なごり雪」を作った伊勢正三さんが歌っているビデオを観たんですよ。声はほとんど出てなかったんだけど、すごく良かったんですよ。今回のアルバムでは、ちょっとそれがヒントになってますね。

―― ヒントというと? 松尾/ 結局歌の中に自分がいなければ、という当たり前のことに気付いたんですね。『月かなしブルー』は若気の至りで、ワーッ!だけで成立させた作品で。『月かなし~』のツアーで新しいことを探しながらライヴをやっている内に、メジャー・デビューが決まったんですよ。で、突き刺さる音楽を追求しようと思っていたんですけど・・・刺すだけじゃなく、染み込ませるような新しいタッチはないかなと思って。染み込ませるには、熱すぎのも嫌だし、冷たすぎるのも嫌だし、人肌ぐらいがちょうどいいかなと思って。人肌?人間味?・・・自分か?って。それで前シングルの「羽」に辿り着いて、その次に書いた「傘」という曲で見えてきたものがあって、いろいろ気付きながら今回のアルバムに向かいました。結果いいアルバムになったと思います。僕は結局は温かい音楽が好きだから、そういうものを作りたかったけど、作り方がわからなかったんですよ。でもそこに自分がいれば良かったという、すごく簡単なことに気付いたんですよ。

―― 何かきっかけでもあったんですか? 松尾/ 前シングルのジャケと今回のジャケを描いてくれた筒井はじめさんという画家と出会って、彼と酒を飲んだんですよ。実はあまりこういうインタビューでうまく話せなくて、そもそも僕は歌っているんだから、それ以上の説明はいらないだろうと思っていたんですよ。 ―― なるほどね。 松尾/ 失礼な話なんですけどね(苦笑)。で、"僕、インタビュー苦手ですわ"と話したときに、"おいおい、インタビューで話す先には誰がいると思っているんだ?"って。"表現というのはFor Youなんだよ"と言われて・・・。確かに歌の中に自分とそこに誰かがいるなとわかってはいたんですけど・・・尊敬している筒井さんにそう言われると、すごく染み込んでしまって。それからはインタビューでも話せるようになりましたね。

―― それから曲作りも変わりました? 松尾/ 今回のアルバムに関しては変わりましたね。自分の気持ちをちゃんと入れて、歌詞の世界を構築するという。今回は歌がきちんと立ってる感じがしますね。究極のことを言えば、スピードを感じないというか。歌はゆっくりだけど、演奏は速くて、それが同時にガチーン!と合わさっているという。友達のおばちゃんに聴かせても"速い曲でもいい歌ねえ"と言ってくれて。それを聞くと、メロディや歌が立っているなと思って。わかりやすく言うと、Jポップを聴いてるような、バラードを聴いてるような感覚で聴いてもらいたくて。 ―― 曲の中に自分を置くというのは、具体的にはどういう作業でした? 松尾/ もう自分がいるから、そんなに難しい説明をしなくてもいいし、曲を作る時間も半分で済んだんですよ。でも早く終わってしまった分、逆に不安になったんですけど。

―― アルバム名にもなっているラスト曲「深まる日々に、微笑みを。」は、もともと音源化する予定がなかったらしいですね。 松尾/ そうですね。すごくいい歌だったから、独り占めしようと思ってて(笑)。大事な歌だから、自分のために歌えばいいやと思っていたんですけど...。『月かなし~』の頃に曲はあったんですよ。あのときはすべてを否定しまくってて、遺書のつもりで書いたんですよ。 ―― ああ、そういうテイストも感じました。 松尾/ 僕が死ぬ瞬間に思い出すことを順番に書き連ねていって、彼女のことはいちばん最後だろうなと思ったから、死ぬ瞬間のラストに書いて・・・。こういう曲は二度と書けないだろうなと思います。 ―― 松尾君の歌声もほぼ語り口調のようなヴォーカルで。 松尾/ そうっすね。これは僕の中では完全にフォーク・ソングです。でも表現としては、なかなかこれ以上のものが見つからないから。次のハードルが上がっちゃったなって(笑)。けど、何10年も歌っていける曲だと思いますね。

―― そんな曲を今回リリースすることになったのは? 松尾/ 今回アルバムのテーマが"自分"で、色々考えたら、隠し玉を持ってることに気づいて。しかもこのバンドをやり始めて、10年目に出るアルバムなんですよ。これは運命じゃないかってことで出すことになりました。 ―― では今作のレコ発ツアーでは、どんなものを見せようと? 松尾/ ちゃんとお客さんと共鳴する瞬間があるかどうかという期待と、それは本当にいいことだろうかという不安がありますね。 ―― お客さんと共鳴することは必ずしもいいことではない? 松尾/ と思います。そうなるとゴールに辿り着いてしまうような気がして、もうその先に何も作れないんじゃないか?と思うので。そういう不安はつきまといますね。またそこから何かが生まれるんじゃないかという期待もあるんですけど・・・楽しみですね。

―― 余談になりますが、今回「深まる日々に、微笑みを。」以外だと、個人的に「合鍵」と「菫(すみれ)」が好きで。 松尾/ 「菫」だけは声質が違うんですよね。ライヴでもこの曲は"くる"でしょうね。ストーリーを構築する術を「木漏れ日にツキル」で完全にマスターしたから、「菫」みたいな書き方ができたんですよ。歌の中に場面がちゃんとあるから、この曲でモッシュが起きたら事件ですよ(笑)。 ▼ GENERAL HEAD MOUNTAIN オフィシャルサイト
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